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母の愛
「たっくん、こんなとこに居たのね!もう、一人で車庫に入っちゃダメってママ言ったでしょう。しょうがない子ねえ、こっちいらっしゃい、ママが足拭いてあげるから。ほらほらこんなに汚して、やんちゃさんねえ。さ、お部屋に戻っておやつにしようね。ママたっくんの好きなチョコドーナツ買ってきたんだよ。今日は寒いからホットミルクにして、ママといっしょに食べようね」
真奈美は満面の笑みを浮かべながら、車庫のコンクリートの上に座り込んだまま決して動こうとしなかった。床の上の足跡を、指で愛おしそうになぞりながら。
その横顔は、まるで聖母マリアかと見まごうほど、慈愛に満ちた神々しいものであった。
子どもを想う母の愛は、時としてその強さで自身をも滅ぼすほど、何よりも深く激しいものなのである。
了
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