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「あの女には掃除をしようという志はある。今も頭の中は、掃除をする自分の姿でいっぱいだ。それがわからんか?」
「自分の姿ですか?」
丞之信が首を傾げたのを見た総二郎は、得意げに話した。
「あの小太りの女に、掃除機は必要ない。それどころか、買うだけゴミが増える」
「どういうことですか?」
丞之信は再び首を傾げた。
「百聞は一見に如かず。参るぞ!」
二人は女の部屋へと飛び立った。女は一人暮らしをしているらしく、たどり着いた先はアパートだった。
部屋の中は散らかっていた。女性らしく、化粧品やサプリメントも転がっている。しかし、ゴミ以上に部屋を埋め尽くしているものがあった。
それは箱だ。未開封の箱もあれば、一度開けて、中に戻したであろう箱もある。
体型を気にしているのか、フィットネスマシーンも置いてあった。これは一番たくさん埃が溜まっている。クモの巣まで張っている。
ほぼ全て新品だ。しかし、埃を被っている。
「なんでこんな……」
丞之信は膝から崩れた。
箱の中身は編み物セット、カメラ、ホームベーカリー、ウクレレ、スケッチブックに外国製の筆記用具、水槽、さらにはキャンプ用品一式。
箱には入っていないが、枯れた観葉植物も一緒に置いてある。
全くもって、統一感がない。
丞之信の頭には、下界で話題の『意識が高いもの』という言葉が浮かんだ。アロマオイルやランタンまで置いてある。
しかし、全て埃まみれだ。
掃除機も、今日見たものに負けず劣らず、おしゃれなローズピンクのものが置いてある。
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