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ふくよかな女性
ん? んん? これは……。
総一郎は水晶玉を覗くと雄叫びをあげた。
「丞之信よ! また見つけたぞ!」
「ええ? またですか?」
「そうだ! けしからん! 参るぞ!」
総一郎と丞之信は下界に飛び立った。
今回たどり着いた先は、家電量販店。店内を一人で歩く女性のあとを追った。若い年頃の、ふくよかな女性だ。
女性は今季発売の最新型の掃除機を前に、店員と話をはじめた。シャンパンゴールドの色をした、スリムでおしゃれな掃除機だ。
「おしゃれですね。いいですね。父上、我が家にも」
「丞之信よ! それは無理だ、よく見ろ!」
「お金なら、福の神に頼みましょう」
「丞之信よ! 値段ではない! おまえの目は節穴か?」
掃除機は軽量、コンパクト。吸引力も問題なさそうだ。
「父上。やっぱり文句の付けようがない一品です」
「ああ。掃除機に罪はない。あれは人類の英知の結晶だ」
「素晴らしいことではないですか。人が人のために作ったもの。私たちの力に頼らずにきれいにしようという、素晴らしい志です」
総二郎は人差し指を左右に振ると、チッチッチと舌を鳴らした。
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