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シェフと見習い
おや? おやおやおやおや?
総二郎は水晶玉を覗き込むと、雄叫びをあげた。
「また見つけたぞ! 丞之信よ!」
「またですか」
「ああ。まただ。けしからん! すぐに参るぞ!」
水晶玉に映し出された下界。その中の人物のもとへと二人は飛び立った。
護美総二郎とその息子、丞之信は天空より下界を見守る神の一族だ。
たどり着いた先はレストランだ。厨房にはシェフと見習いらしき人物がいる。見習いは、ひたすらシェフの足元から調理器具まで、きれいに掃除し続けている。
二人はそれをしばらく見守った。
透明な姿は、人間には見ることができない。そのまま数時間、二人は見続けた。
「父上、立派ではないですか」
延々と掃除を続ける見習いを見て丞之信は言った。弟子と師匠の姿。丞之信の頭の中には『見て盗め』という言葉が頭に浮かんだ。
「丞之信よ! おまえの目は、節穴か!」
丞之信の耳がキーンと鳴った。耳の穴に指を突っ込んで鼓膜の安否を確認した。
「よく見ろ、あの二人。さっきから、ずっとあのままだ」
「はい。見ておりました」
「あの二人はな、何年も、あのままだ」
「それが師弟というものではないでしょうか」
総二郎は人差し指を左右に振ると、チッチッチと舌を鳴らした。
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