旅路

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2020年12月8日  世の中がコロナコロナとうるさくて仕方なかった。それは9年前に東日本大震災が起きてからの半年くらいの日々と似ていた。しかし、それにしてもコロナ以外のことが世の中には起きているだろうに日常がコロナという墨で黒黒と塗りつぶされているようでうっとおしく味気なかった。  私は死ぬのが怖くはない。私がいなくなった世界で何が起きても興味がない。そもそも私が死ぬ前に世界が死にかけているような気さえする。いっそ世界も私もいっぺんになくなってしまえばいいと思う。  Go toキャンペーンがある。Go toの続きにあるのは何だろう。東京か大阪か北海道か福岡か。それは土地の名前で本質ではない。場所であって目的ではない。Go to のあとに続くのがhellだったら面白い。私が選んだ政治家が私を地獄に誘いいれようとしていたらと思うとゾクゾクする。  ゾクゾクすることをしたい。今一番ゾクゾクすること、それは無意味な旅である。2020年はもうすぐ終わる。死神が背中をついて回るような年が終わる。それなら日本という国の地獄巡りをしてその死神がどんな顔をしているのか覗き込んでやる。書きまくって写真を撮りまくって、一人一人の人間にどんな死神がついているのか記録してやる。  コンビニのATMに向かい8回に分けて預金を全ておろし(147万円だった)、会社のアドレスに「大変お世話になりました。やりたいことができたので辞めます。」と送り、スマホとPCを包丁のつかの部分で叩き壊した。 私は財布と黒ボールペンとメモ帳だけをキャメルのコートのポケットに入れ部屋を出た。
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