旅路

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 歌を口ずさんで歩いた。中島みゆきの「時代」、スガシカオの「甘い果実」、スピッツの「ロビンソン」、コンビニの明かりが見えている。青白い光が煌々と。私は虫です。ただ光におびき寄せられた虫です。頭に自嘲的な言葉が浮かんでくる。自分は今誰もが思い浮かんでもやらない、しょうもないことをやっている。ありきたりなことだ。みみっちい犯罪みたいなことだ。でもワクワクしているどうしようもない虫です。  コンビニでカフェオレと卵サンドを買った。ここがどこか気になったからコンビニの名前を確認した。「ファミリーマート鳥飼本町五丁目店」。どこで食べよう。夜が明けているから、眺めのいいところで食べたい。当たりを散策しても山らしい山もない。大きい公園があったからそこのあずまやのベンチに座り込んだ。疲れた。疲労が顕在化してくる。あずまやのテーブルにメモ帳を開いて、サンドイッチをパクつきカフェオレで流し込みながら書いている。            2020.12.9  午前8時頃  書いている間に疲労の塊がゆっくり意識や思考をからめとって大きくなっていく。これから俺はこのベンチとほとんど同化するように寝るのだろう。その時にこの現ナマはどうしよう。自分の腹に乗せてコートを被せておくのは危険だ。半分は靴下に挟み込み、もう半分はうなじに挟みこんで枕のようにして、寝るのだろう。体が入れ替わった男女の主人公の話で「おれがあいつであいつがおれ」みたいなキャッチフレーズが思い浮かぶ。「おれが金で金がおれ」。身も蓋もない話だとまた自嘲気味になる。もういい、今日はいい、やり切った気分はしている。おれはウィルスを撒き散らしている(かもしれない)クソだが、今に対しては誠実だ。寝る。  
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