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「は、初めまして……私、この家の新入りで山野筑紫と申します。」
僕もお父さんもお互い深々と頭を下げたが、お父さんの名前に少し、引っかかった。
えっ………、今度は聞き間違いじゃないぞ、山のツクシって言った……
アケビにワラビにツクシだなんて絶対、この家庭ふざけてる。
あっ、その時、僕は気付いた。
新しいお父さんは山野。
お母さんは村野。
名前は似てるが姓が違う……
玄関のプレートは村野だった…
アケビさんが認めてないから、二人は同じ姓になれないのか……
なんか切な過ぎる……
あっ、それに僕は結婚もしてないのに、お父さんやお母さんなんて言うのは変だ……
僕は何て言ったら良いんだ。
輪奈美さん⁇
絶対、変だ……失敗したらワラビさんって言ってしまう。
それにお父さんなんて、アケビさんから認められてないのに、お父さんなんて言ったらアケビさんから何をされるか分からない……
ツクシさん?⁇
絶対、笑ってしまう。
アケビさんのお母さんとお父さんさんは台所で寄り添って何かを作っていた。
「健二さんも明美も昼ご飯まだでしょ?
健二さん、大した物が有りませんがよかったら皆んなでお昼ご飯にしましょう。」
お母さんとお父さんがテーブルに料理を並べ出した。
本当に大した料理じゃなかった。
魚の煮付けと味噌汁、沢山の漬け物が並んでいるだけだ。
「食べてよ。輪奈美の手料理はシンプルだけど凄く美味しいから……」
しかしアケビさんは苛立ちの表情に変わり、場を凍らす一言を言ってしまった。
「輪奈美⁇……この前まで輪奈美さんって言っていたのに……」
なんかヤバい雰囲気です。
もちろん、お父さん、お母さんも感じてるはずだ。
どうにか場を和ませよう。
「す、凄く美味しいです。
魚の煮付けなんか味がしみて!」
「そ、そうでしょ!ぼ、僕はそんな所に惚れたんですよ。」
お父さんは顔が真っ赤になっていた。
でも、本当にシンプルだけど凄く美味しかった。
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