第5ミッション 子供を作ろう。

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 そして過酷な修行が始まった。  と言っても、ここに来て一週間、雑用ばかりだ。 「すまんの〜妻に先立たれ、男寡で部屋は無茶苦茶だったが君が来てくれたから助かったわい。」 「そろそろ、パン作り教えて頂けませんか?」 「そうじゃったの〜忘れてた。  こっちに来い。」  僕は奥にある広い調理場を始めて覗いた。  その調理場だけは、僕に掃除を頼まなかった場所だった。  何処を見てもピカピカだ。  しかし、調理器具なんてほとんどない。 「オープンは何処に有るんですか?」 「そんなもん有るかいな!  あの奥を見ろ!ワシの手作りの石窯だ。」 「石窯???」 「全て、これで焼くんだ!美味いぞ〜石窯で焼いたパンは!  火加減が難しいがな!  一人前に焼けるのは2年は掛かるな!  あっ、お前の嫁さんが言ってたぞ!一人前になるまで宜しくお願いしますとな!」  ぼ、僕は鈍臭いから死ぬまでここでタダ働きかも知れない。 「まず、このパン生地をこねてみろ。」 「は、はい。」 「おっと……素人にしたら上手いじゃないか。」 「おじさんも素人でしょ……」 「うるさい!ワシはお前の師匠だ!事を師匠と呼べ!  しかし、お前、何処で修行してたんだ?センスは良いぞ!」 「僕の愛する妻から沢山教わりました。」 「なんだと……」  それ以来、僕は師匠に沢山の事を学んだ。  結構、良い人だ。  でも、アケビさんに電話をしても出てくれない。  どこまでアケビ、厳しいんだ……  早く一人前になってアケビさんに逢いたい……  その頃、アケビさんは新人では唯一の女子国内ロードレースの出場権を獲得した。
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