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その頃、僕は……
「おい、健二!今日は大切な石窯でのパン焼きだ。
このドーム型の石窯はワシの手作りだ。
ドーム型はパンの水分を逃しにくくて短時間で高温になり周りがカリッと中がふんわかに焼き上がるんだ。
でも、焼き方と温度を間違ったら、真っ黒焦げだ。」
「あの〜、僕の家には石窯なんて無いんですけど……石窯なんて勉強しても……」
「石窯ぐらい、お前が一人前になったらワシが作ってやる!」
「ほ、本当ですか?」
「後の事は気にするな!
今の事だけ勉強しろ!薪とは使った事は無いだろ!」
「いえっ、ぼ、僕の家は五右衛門風呂だから毎日、アケビさんの為に五右衛門風呂を沸かしてます。」
「五右衛門風呂⁇なんだと……
まずはワシがお手本で焼くから見とけ!」
「おじいちゃん!カトケンさんに厳しく言ったら、私が許さないわよ!
ねっ、私だけのカトケンさん♡」
「すまんすまん、典子。
コイツを一人前にしなくては、健二の奥さんにも怒られるんだ……」
「私とカトケンさんの奥様、どっちが大切なの?おじいちゃん?」
「そ、それは、典子に決まってるじゃないか?」
「あっ、良い事を考えた!
カトケンさんにパン作りを教えたら駄目!そうしたらカトケンさん、ずっとこの家に居るんでしょ!」
「だ、駄目です。
僕は、早く一人前になってアケビさんの元に帰りたいんです。」
「お前は嫁の元に帰りたいが為にパン作りを覚えているのか⁇⁇」
「はい。」
「典子、ここは作業場だ……出て行きなさい。」
「は〜い……おじいちゃん分かったよ……
後でカトケンさん、一緒にお風呂に入ろう!」
「こ、こらっ!典子……
健二、ちょっとでも間違いを犯したらワシが許さんぞ!肝に据えとけ!
明日はパンの生地の発酵の勉強だ。」
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