第5ミッション 子供を作ろう。

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「師匠、出来ました!」 「駄目だ!」 「師匠、出来ました!」 「駄目だ!」  僕はアケビさんに早く逢いたい為に、必死にパン作りに没頭した。  それは、僕が今までに経験した事の無い血の滲む努力だった。 「師匠、出来ました!」 「駄目だ!後少しだ!」  その頃、アケビさんも明日の女子国内ロードレースに向け、筑波サーキットで猛練習を行っていた。 「カトケンさん、頑張ってるかなぁ……  早く、逢いたいよ……  でも、カトケンさんなら絶対、私を早く迎えに来てくれるはず!  ねっ、カトケンさん。」  ホテルのテーブルに置かれた僕の首振りフィギュアにアケビさんは首を振りながら話しかけてくれていた。  絶対、本物のカトケンさんの方がイケメンだし!…… 「師匠、出来ました!」 「う〜ん……まぁ、良いだろ!」 「師匠、完璧じゃないと駄目なんです! もう、1回やります。」 「典子、健二君は変わったぞ! あの目つきを見てみろ!ギラギラに輝いてるぞ!」 「おじいちゃん、私、帰るわ!  だって、カトケンさん、部屋でフィギュアに   話しかけてるの見たの……  あのギラギラした目つきで……  私、怖くなっちゃった。」 「そっか……帰るのか?」 「師匠、出来ました!」 「完璧だ!良くやったぞ!おめでとう!」 「何処で師匠、僕の部屋に有ったフィギュアを知りませんか?」 「フィギュア⁇  あぁ……あの可愛いお人形さんかい。  あれは典子が帰る時、石窯に投げ込んでいたぞ……」 「えっ、僕のルナちゃんミーちゃんルカちゃんが石窯の中で燃えた……」 「一体だけ、典子が自分に似ているって言って持って帰ったみたいだが……」 「それって、ルカちゃんだ……」 「そう言えば、お前の嫁さんから小包が届いてるぞ……」  僕は小包を開けた。 「あっ、これはもしかして、アケビさんのフィギュア……⁇⁇す、す、凄く可愛いい!」  僕は3体の大事なフィギュアを失ってしまったが1番の最高なフィギュアと出会った。
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