79人が本棚に入れています
本棚に追加
「一馬君が家に来てくれて、本当助かってるんだ。
部屋の掃除もしてくれるし、ワシは妻と子供が出て行ってからずっと1人だったから一馬君がワシの息子に思えてなぁ……」
「おっさん、オレの布団に入って来たんだよ!
蹴っ飛ばしたけど!」
「ワシは変な趣味は無いが馬小屋生活に飽きて一馬と一緒に寝たかったんだぁ……」
「オレ、おっさんの息子になっても良いよ。
だって、オレも父ちゃんが浮気して母親に育てられたから父ちゃんが欲しかったんだぁ……
これから、おっさんの事、父ちゃんって呼ぼうかなぁ……」
何か変な事になっている。
あれから助六さんは一馬君と一緒に生活を始めていた。
「健二、明美さん、臼が有るから餅つきしないか?」
「わぁ!やりたい、やりたい!」
「アケビさん、駄目だって!お腹の赤ちゃんが居るんだから!僕と一馬君で餅をつくよ。」
アケビさんは、こんな行事は大好きだ……
『ワシらも参加するかい?』
「と、父ちゃん、この杵、急に軽くなったよ……」
「それは一馬が大きくなったからだ。」
僕とアケビさんは2人にはついていけない……
子供達が沢山集まり、皆んなで餅つき大会をして正月気分を味わった。
そして、万福村も春が訪れていた。
「助六さん、もうすぐ麦の種まきですね!僕も手伝います。
本当かい?一馬もいるから助かるよ。」
アケビさんのお腹も少しずつ大きくなって妊娠7ヶ月を迎えていた。
僕とアケビさん、そして一馬君は今日も売っても売っても儲けにならないパンをひたすら焼き続けた。
「そろそろ、一馬君にもパン作り教えてやるよ。」
「本当か!師匠。」
「僕は教えるのが苦手だから、目で盗んで!」
「えっ、盗むのか?どうやって?」
「だから目で……」
「……。」
「カトケンさん、また動いた!
歩ちゃん、(あゆちゃん)駄目だよ!ママのお腹を2人して蹴ったら!」
「アケビさん、ママだって….
僕にも、あゆちゃんを触らせて!」
「明姉さん、オレも触らせてよ!」
「コラっ!一馬、僕のアケビさんに少しでも触ったらぶっ殺すよ!」
「は、はい……」
僕達はお腹の赤ちゃんに歩のあゆちゃんって話しかけている。
「アケビさん、双子なのに戸惑わないかなぁ……」
「だって名前をちゃんとつけても、どっちが蹴ったか分からないもん。
あゆちゃんって言ったら2人共、おとなしくなるんだよ。」
最初のコメントを投稿しよう!