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「今度の夏祭り、のど自慢大会にエントリーしたんだぁ……ムサシ、一緒に歌わないか?」
「のど自慢大会?……俺、もう、歌は歌わないよ。
だって怖いんだ…
俺が歌ったら、カトケンの偽物ってヤジが頭から離れないんだ…」
僕はムサシ君の心の気持ちなんてその時、全く分かって無かった……
「ムサシ君、やる気有るの?
パンの箱詰め無茶苦茶だよ……箱は潰れてるし食パンも押し潰れてるし……」
「ゴメン、カトケン師匠」
「ゴメンじゃないよ。それにカトケン師匠って何?」
「一馬君もそうだけどムサシ君も、ちょっとは僕を尊敬してよね!」
「お、俺だって頑張ろうとしてるんだ!」
ムサシ君は勝手に飛び出て行った。
「ムサシ〜」
「一馬君、ムサシ君なんかほっといて仕事をするぞ……」
「し、師匠、ムサシの気持ちなんて何も分かってないくせに!ムサシは今、心の病なんだぞ!
それもムサシは言っていた。
今でも俺の心にカトケンさんが呪ってるって!
それでも、パン屋でもいいからカトケンさんと仕事がしたいって言っていたのに……」
「僕がムサシ君を呪ってる……
ムサシ君の心の病は僕のせい……」
「カトケンさん、ムサシ君を追いかけて!」
「うん!」
「明姉さん、オレも行ってもいいですか!」
「一馬君は石窯を見なくちゃ……」
「きっとカトケンさんが解決してくれるよ。一馬君。」
「は、はい。」
僕は必死にムサシ君を追いかけた。
僕の目には沢山の涙が溢れ出していた。
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