第7ミッション        僕、イクメンになります。

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 川の土手にムサシ君はいた。  僕はそっとムサシ君の隣に座った。 「ムサシ君……さっきは怒ってごめん。  まだ、初日だったのに……  僕にムサシ君の気持ちを教えてくれないか?」  ムサシ君は少しの沈黙の後、話出した。 「俺、イケメン5に入った時、カトケン師匠の事が嫌いだった。  ダンスも出来ないのにいきなりセンターに抜擢されて……でも、歌を聞いた時、俺、痺れたよ。  鳥肌が立った。  絶対、この人には敵わないって……  そして師匠、あんたは俺達から去ったんだよ!  それも突然、俺達を見捨て……  残された俺達の気持ちは分かるか……  俺が歌うとファンは偽物とか月とスッポンとか馬鹿にされ続けたんだ。  俺は耐えれなかった……  クビをスター速井から聞いた時は何故か嬉しかった。」 「そうだったんだ……  僕はムサシ君やイケメン5の気持ちなんて考えても無かった気がする。  きっと皆んなも僕に対して一緒の気持ちなんだろうね……僕は皆んなに謝りたい。」 「じゃ、今度の夏祭りののど自慢大会にカトケン師匠も出てくれるかい?  そうしたら俺、他の仲間を呼ぶよ。  これでイケメン5の再結成だ!」 「なんなのそれ……僕は皆んなの前で歌を歌わないって誓ったんだ!それだけは無理!」 「頼むよ!俺が引きこもっていた時に作詞を書いたんだ……  よかったら見てくれないか?」  ムサシ君はポケットからシワシワの紙を僕に渡した。 【君のハートはマリンブルー海より綺麗なマリンブルー】 「ム、ムサシ君、凄く良いよ。  本当にムサシ君が書いたの?  全然、スター速井さんの曲より良いよ。  ちょっと歌ってくれない?」 「実は作曲もやったんだ…聞いてくれる?」 「うん。」 【君のハートはマリンブルー♪♪♪海より綺麗なマリンブルー♪♪♪ ソーランソーランヨイヨイ!】 最後のサビは、演歌で頑張ってる隆一が歌うんだ!」 「凄く良い曲だよ!ムサシ君。  それに皆んなの事も考えてるんだね。」 「この曲をカトケンさんに歌って貰いたいんだ。」 「分かった……俺、夏祭りに歌うよ。」  また、僕はムサシ君の勢いに押されて歌を歌う羽目になった。
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