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「健二、いよいよ始まったなぁ……」
「あっ……師匠じゃないですか!
久しぶりです!どうしたんですか?」
「あそこの夜店でパン屋を出してるんだ!
ビックリしたよ!お前さんの嫁が大頭取になるなんて!
仕事そっちのけで見に来たんだ。
よく健二、あんな危険な大頭取になる事を許したなぁ……」
「えっ……そんなに危険なんですか?」
「知らないのか?」
「えっ……あっ、ツクシさんとワラビさんも……」
「ワラビじゃ有りませんよ!健二さん、また明美が無理を言ったんでしょ……あの子、自分がやりたい事は誰が止めても、聞く耳持ってないし……」
「すみません、止めさせなくって……
ツクシさん達も夜店を出してるんですか?」
「そうなんだ……本当はゆっくり見たかったけど、出店する店が少なくって役場から無理に頼まれたんだ。
明美さんなら大丈夫だよ!きっと勝って元気に帰ってくるさ!」
万福村と宝福村の中間に有る長者山神社にお互いの村で収穫した食材を早く奉納した神輿が神からの豊作が約束されると言われてる。
長者山は低い山だが崖なども有り、転落したら一巻の終わりだ……
長者山を神輿で担ぎお互い神輿をぶつけ合ったり壊したりてっぺんの大頭取が落ちた時点で負けだ。
担ぎ手は4人、てっぺんの大頭取が1人の何とも小さい村の喧嘩神輿だ。
「さぁ!一気に長者山神社に行くわよ!」
担ぎ手の4人はアケビさんの言葉に動きが止まった……
「はぁ〜⁇⁇」
「何言ってるんだよ!」
「俺達は隣村の宝福村の連中の神輿を壊したいだけなんだよ!」
「喧嘩神輿はレースじゃないんだよ!」
「だから、おなごの大頭取は嫌だったんだよ!」
「誰も大頭取になるのは危ねぇし、なり手がいないから納得したが、おなごは黙って神輿に掴まってろ!」
「何で今頃、そんな事を……」
「役場の神輿会議で言ったら、今回も中止になっていたからな!」
「話してる場合じゃないぞ!宝福村の連中が向かってくるぞ!」
「大頭取のおなごさんしっかり掴まっておけよ!
お前が落ちたらおしまいなんだからな!」
『やっぱり今回も喧嘩神輿の勝負に出たな……屏介』
『やっぱり、男は逃げずに勝負だよな!』
『屏介さん、神輿が壊れるまで喧嘩とは……
どうか神輿を止めて明美を助けて下さ〜い!』
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