第二章 月影の、その夜に

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 暗闇に、二つの影があった。  ジジ、という蝋燭の煙る音と共に、ゆらりと小さな火が動く。 「そろそろ、終わらせる必要が出てきたかもしれん」 「まさか……露見したのですか……?」  幾分若い――否、幼いといっても過言ではない声が、語尾を持ち上げ訊ねた。 「いや、まだだ。まだ、本来の目的は見えてはいまいよ」  すっと引き締まった頬が、不愉快そうに歪んだ。眉の間には皺が刻まれ、瞳の奧は苛立ちに満ちた色に染め上がっている。 「だが、途中まで嗅ぎ付けた」 「どなたが?」 「――直鷹(なおたか)だ。普段から立場も弁えず、血兄弟(ちきょうだい)悪童(わっぱ)と一緒にあちらこちらにフラフラと出歩くような粗忽者だが、でも、油断は出来ん」 「直鷹、どの……」 「準備はどうなってる?」 「それはすでに進めてはおりますが……。次回は、当初の予定通りここです」  手持ち用の燭台へと火を灯すと、コツリと音をたてて板間へと置いた。そして、すっと懐から蝙蝠扇(かわほりおうぎ)を取り出し、床に広げていた地図の一点を指し示す。 「……使われてないのか」 「場所が場所ですし。半月ほど前に私も確認のため二、三度足を運びましたが、近隣に住まう者もなく、すでに使われなくなってから数十年と聞きました」 「そうか……」  言葉少なく問う男の声に、予めわかっていた答え合わせをするかのように幼い声が返された。男は、その返事に漸く落ち着いたのか、溜め息のような吐息と共に言の葉を零す。 「では、来月だな」 「そう、ですね……」  二人の呟きは、闇の中に溶けていった。
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