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プロローグ――堕ちた神
「何故、お前と俺が戦わなければならないんだ……戌神!!」
苦悩じみた声で十三番目の神は吼える。手に持つのは彼の神刀、妖精刀ミケガミ。
魔神を倒す。その一歩手間で戌神が壁となり、行く道を阻む。切っ先を戌神に向けているが、手が震えていた。
「それは答えることができないの……。でも、貴方が必ず魔神を止めてくれると信じているわ……だから、ごめんなさい」
玉座に座る魔神の厭らしい笑みとは対照的に、戌神は悲しそうな声で自らの神刀、乖理刀フェノデロスを引き抜いて十三番目の神――猫神の腹を突き刺した。
「ぐっ! どうして、い……がみ…………」
自身の最期。この刹那、猫神は戌神の瞳から一筋の光が伝ったのを見逃さなかった。
それから一瞬意識が暗転したのち自分自身が落下しているような浮遊感と、何かに引きつけられる感覚に襲われる。浮遊感が強まると、それに伴って引力も増大。
大いなる流れに沿って流されていて、呼吸すらも許されず、目を開けることも当然できなかった。
「うっ……っ!」
浮遊感がおさまるとともに、意識は薄れゆく。半開きになった眼から見えたのは巨大な滝と、虹だった。
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