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「ああ……一度絶望するだけなら、もう一度立ち上がることができる。でも、絶望に慣れてしまえばそこから立ち上がることは決してできない」
「……わかった」
猫雅はこくりと頷いて、これから共に生活する子供たちの顔を一人一人、覚えていく。その中で、子供たちもそれぞれの名前を口にした。
「猫雅っていうんだなー! 俺は迦銀だ! よろしくな!」
「僕は猿弥……よろしく!」
「私は桧綺……よろしくね」
「ああ、よろしく!」
よろしくという言葉に猫雅は頬を緩めて、見せた二度目の笑顔。初めて見せた笑顔に比べると瞳に影が落ちていて、どこかぎこちなさがあった。
『うん、よろしく!』
猫雅の返しに、三人は白い歯を見せて笑う。屈託の無い笑顔につられて猫雅の瞳も、歓喜の光が灯る。
「まあ、とにかくだ。これから一緒に生活するわけだが、俺はお前さんたちを満腹にしてやれるとは保証できねぇ……。それでも、貧しいながらも楽しい時間をお前さんたちと過ごしたいと俺は思っている。だから、改めてよろしく頼む……」
鯛道はそう締めくくって、大きな手の片方を猫雅の頭の上に乗せた。いつにも増してスキンヘッドが輝いて見えるくらい、豪快な笑みを浮かべている。
共に生活するということで多少なりとも不安はあれど、猫雅はこれから始まる新しい日常に心を踊らせていた。
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