楽しくて、つまらない食事

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 *** 「ああ、そういえば猫雅」  食事の最中、鯛道が別の話題を切り出した。 「ん? 何だ、鯛道……?」 「お前さんはどうしてあの場所で倒れていたんだ?」 「あの場所……?」  猫雅は起こされた場所が虹のかかった滝であることは覚えている。それでも何故かと聞かれるほどのこと話題でもない。  しかし、鯛道はそのまま続けて、 「あの場所はな……世界の淵なんだ。この街も、世界の隅っこだ。だから、少し気になってな……」  世界の淵。その言葉を聞いても、全く思い出すことができなかった。 「淵の向こうには、何があるんだ……?」 「淵の向こう? ああ、()()()()らしいぞ。ただ落っこちる……それだけなんだとさ」  誰かに聞いて来たかのように、鯛道は答える。でも、鯛道本人の表情も疑心暗鬼の色が濃いようだった。 「猫雅、お前さんはもしや……」  何か、知ってはいけなさそうな事実。その察しがついた鯛道ははっと口を噤む。心の内へしまい込んで、鯛道はすぐに朗らかな表情へ戻っていた。 「……楽しいけど、なんだかつまらないな」  猫雅はふと呟く。楽しいはずなのに何かが足りなくて、その正体が一体何なのか猫雅には分からない。 「猫雅、お前……」  一瞬だけ目くじらを立てた鯛道だったが、猫雅の今までとは明らか異なる雰囲気に言葉を失ってしまった。
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