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緋色の椅子
それからというもの、無言の団欒が続く。一番最初に迦銀が食べ終えて、次に猿弥が席を立つ。
「それじゃあ遊んでくるー! 行こうぜ猿弥!」
「うん、行こう!」
「……まって、私も!」
二人は納屋の戸を開けて、外へ飛び出した。先に外出してしまった二人に対して不満そうな桧綺も、残りの食べ物を一口で飲み込むとたちまち二人の後を追う。
部屋に二人残された猫雅と鯛道は、お互いに口を噤んで虚しい時間が続く。その空気感に耐えられなかったのか、鯛道の口からぶっきらぼうな言葉が漏れた。
「……お前さんも遊んでこい。子供は遊んで育つんだ。だから、限られた時間を自分のために使ってきな」
少しだけ、突き放すようにも聞こえる。それでも、その言葉には鯛道の精一杯の優しさが込められていた。
「……ああ、わかった。遊んでくる」
猫雅の容姿は十歳くらいで、褐色の瞳と焦げ茶色の短髪が特徴的だ。頬にある髭のような紋様が猫を想起させる。猫雅は焦げ茶の前髪を揺らして、小走りに戸の外へと出ていった。
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