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スラム街の外。街とは正反対の方角へ進むとそこには広い平原がある。猫雅はまず最初に、三人の遊びを遠くから眺めた。桧綺は手に何か丸い球体を持っている。それを投げると迦銀がキャッチしてそれをまた猿弥に投げた。
「おーい、そっちいったぞー! 猫雅、キャッチよろしくー!」
猿弥が桧綺へ投げようとすると上手く飛んで行かず、遠くから眺めていた猫雅のほうへ飛んでいく。
「……え、あ、ああ」
球体を手の中に収めようと、手を伸ばす。球体との距離を自然な動作で埋め、気がつけば手の中には球体が握られていた。その球体は、適度に柔らかい。握ってつぶれてしまうほど柔らくはなく、しっかりとした反発があるのだ。
「俺も、混ぜてくれないか?」
「んー? いいよ! やるならこっちにきてくれ!」
迦銀の誘いで、猫雅は三人の輪の中に入っていく。
「ところでこれ、この球体はなんなんだ……?」
手に握るこの球体はなんなのか、猫雅は思わず気になってしまい迦銀に尋ねた。
「それはボールだよ。さっきみたいに、投げて遊ぶんだ!」
「ボール……」
聞き慣れない名前に首を捻るも、すぐにボールを猿弥へ投げ渡す。猿弥は迫り来るボールにあたふたしながら、ボールを掴み取る。
そんな楽しい時間がしばらく続き、時間を忘れた頃には空が茜色に傾いていた。
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