悪の研鑽

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悪の研鑽

その1 その知らせはこの日突然、舞い込んできた ”あの相馬豹一の実子で、相和会を継ぐことが周知されていた、相馬定男が急死したのか‼” 大打ノボルにこの驚愕の一報が届く数時間前…、彼はココ(東京埼玉都県境)と横浜を往復したその間をフラッシュバックさせていた…。 ”横浜を軸とした周辺はしっかり押さえた。特筆すべきは、我らの台頭を界隈では、そうたいそうに捉えずにいてくれてることだ。目だたずさりげなく、だが確実に浸食していく…。まさしくオレ達は、これを教科書通りなぞって行った。無論、東龍会の力は借りたし利用した上での成果だ” ”一方の進駐地としたココ(東京埼玉都県境)の地では、当初の頬かぶりを徹底した。オレも椎名もタカハシも…。武次郎だけは、やや虚勢を張ってたが(苦笑)” ”それでも、東龍会と共有している目的からはブレることなく、このオレが傍観者を貫き通してこれた。ふふ‥、立ち止まることに恐怖さえ覚えるオレだ。初めはあくびが出るかと思ったが、まるで飽きることなどなかったな。利害関係を排除した立場で見物するには、これほど面白い地はねえよ(苦笑)” 大打ノボルを、”その立ち位置”で飽きさせなかったのは、砂垣順二の挙動にあったと言える。 ある側面では、”仮想自分”としてポジション面を重ねあわせる目でリサーチしてきただけに、この地でやくざのパートナーシップを得た彼のこの3年間は誠に興味深く捉えることができたのだった。 ... ノボルは星流会本部で、砂垣と初めて会った時のことを思い浮かべた。 「おう、順次…。これが横浜のスマートな”同僚さん”のリーダーでな、大打ノボルだ」 「やあ…、おしゃれな街の同僚さんをシメてるのはアンタか。そっちのお仲間とはうまくやってるし、まあ、よろしく」 「こちらこそ、断れない雇われで駐留なんでね…。まあ何分、仲良く願いますよ」 ”今から思うと、何ともヘンテコな挨拶だったな。顔のでかい諸星会長も思わず苦笑いしてたし(苦笑)” ... 「ほう…、身長180超の大女ねえ…。順次さん、それじゃあ、アンタの当面の敵はそのアメリカ帰りの女が率いる紅組とかって女連中なのかい?」 「ああ…。あのな、ありゃあ、女じゃねえよ。化けもんだ。ヤツ一人ってんならともかく、何しろどんどん増えちゃうんだよ、瞬きしてる間に。剣の達人やらなにやら、もうこの都県境じゃあ、猛る女で溢れかえっちゃってる」 ”なんともなあ…、ってとこだったぜ(苦笑)。黒原盛弘が亡き後の再編も中途半端で、足元の墨東会は年中、体制がコロコロ変わってすったもんだだ。おまけに女連中にも引っ掻き回されてる砂垣には、いろんな面で驚かされたもんだ” ある意味で当時のノボルは、この掴みどころのない”風見鶏”にカルチャーショックを受けていた…。
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