血塗られたフランスの歴史

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 16時。講演が始まって1時間が経過した。今のところ退出者は出ていない。  だがここからはどうだろう。スピーチはこれから、いよいよ山場に差しかかる。    ピエールがスクリーンを振り返り、手の中でスイッチを操作した。すると映像が変わり、愛らしき動物たちから一転、禍々しいばかりの鉄の塊が現れた。 「鉄の処女(アイアンメイデン)。中世に作られた掃除道具です。システマチックに掃除をします。大きさは大人一人が入れるくらいの女人像で、正面に観音開きの扉があり、蝶番で開閉できるようになっています。ご覧の通り、人形の内側にはびっしりと長い鉄の釘が埋められていて、の中に閉じ込められた犠牲者は、扉が閉まると同時に串刺しとなるわけです」  客席からかすかに悲鳴が上がった。しかし席を立つ者はいない。 「皆さんなかなか図太いですね。私なんか、これを最初に見たときは卒倒しましたよ」  ピエールが肩をすくめてみせると笑いが起こり、会場は再びリラックスしたムードに包まれた。  次の画像が映った。観客はみな前のめりに、食い入るようにスクリーンを見つめた。 「次にお見せするのはこれ。もうお分かりですね。そう、ギロチンです。ギロチンは別名、フランス革命の落とし子とも呼ばれています。処刑具の歴史を華々しく飾るエポックメイキングですが、16世紀のフランスに登場した鉄刃による断頭具「ドロワール」の延長上にあることが明らかです。
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