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ーー なぜだ? どこから情報が漏れている?
寒空の下、ピエールはコンコルド広場の石畳の上をコツコツと苛立たしげに大股で歩みながら考えた。
こんな雪まじりの雨の中でさえ、背筋を伸ばして規則正しいリズムで歩く。その立ち居振る舞いからは、彼のプライドの高さがうかがえる。
細身の長身は一部の隙もなく、いかにもインテリらしい落ち着いた服装で整えられている。
丁寧に後方へ撫で付けられたプラチナブロンドの前髪、月光を浴びたような白い肌、高い鼻療の上から見下ろす二つの冷ややかな青い瞳ーー ピエールのこの整った顔立ちは、典型的なゲルマン人の特徴である。
ーー 誰が今さら、ナチスを疑っているのだ?
雪まじりの風に正面から吹かれ、ピエールは露骨に顔をしかめた。夕方頃、セーヌ川から立ち込めるはずの霧が、よもやこの風に流されてしまうのではないかと懸念したのだ。
先ほど通り過ぎたジュ・ド・ポーム国立美術館もオランジュリー美術館も、フランスにはもったいない。せいぜいお似合いなのはコンコルド広場ーー かつては革命広場と呼ばれ、ルイ16世やマリー アントワネット、ロベスピエールなど1300人を超える人々が処刑された場所ーー くらいのものだ。
ピエールは暗澹たる思いで川沿いを歩く。
アレクサンドル3世橋の真下に、一隻の小舟がぽつりと浮かんでいるのを見つけた。
ーー 手筈通りだ
横付けされた小舟を横目で見やり、何も気づかないふりをしてすぐに建物へ入った。
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