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現在、世界中の先進国はもれなく核を保有している。もれなくだ。発展途上国ですらそのほとんどが、せいぜい一つくらいの核爆弾なら、当然の如く保有している時代である。
これらの国々が一斉に核を放てばどうなるか。地球の行く末は、子どもですら容易に想像がつく。
よって、大戦参加国は互いに核の使用を固く禁じ合い、代わりに、これでもどうぞとばかりにサイバー攻撃をしかけた。
例えば小さなところではこうだ。いまやほぼ全人類が所有している携帯電話に搭載されたAIを操作し、意図的に限られた人物に虚偽情報を与えた。
大きなところでは、発電所のシステムを操作したり医療現場のサーバーを全てダウンさせたりと、敵国に社会的混乱を引き起こすことを経過地点として、最終的に国民生活を逼迫させることを目的とした。
あるいは、細菌やウイルス、毒などの生物攻撃を使用した生物戦が展開されている。
優秀な科学者たちの手によって未知のウイルスが次々と開発され、世界中が謎の毒薬に溢れた。
普通の生活を送っている人々が、日中の往来で突然倒れる。起き上がることは二度とない。それが生物兵器だ。
自らは手を汚さずに敵を苦しめること。
血を流さずに人を殺すこと。
この二つが、今大戦全体を貫く美学だと言っても過言ではない。
そんな中、若き戦争歴史学者ピエールのもとに、不可解な情報が舞い込んできた。
それは、どうやら戦争のどさくさに紛れて、先の大戦における恐怖の代名詞・ドイツナチスが復活したらしい、と言うものであった。
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