池畑建設

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池畑建設

池畑建設は、工務店に毛が生えたような小さな有限会社だった。 池畑策実 職人気質の男で、大人しく商売っ気もなく毎日が恙なく暮らせればそれでいいと、実直に仕事をするこの池畑の前に但馬晋(たじましん)が現れる。いや、池畑の前というよりも、池畑の三人の娘 その長女 美しく溌剌とした実(みのり)に一目ぼれした但馬が自分から池畑家の婿養子となり、この池畑建設を総合建設会社と大きくした。 元々大手ゼネコンの営業マンでその関係で下請けの池畑と知り合い、実を知り、大手では難しい小回りの利く新しい会社を設立する。30年前 今のネット社会の息吹きを感じ その商才 社交性 人脈を使い 会社を確かなものとした。池畑家の無駄に広い土地 山を処分し資本金を作り 株式の形を取ると 建築研究に取り組み 今では100に近い特許を持ちパートナー企業も数多く持つ。 榊原修平は、実の妹 姉妹の中では大人しく一人理系女子で研究畑に進み、共に薬品会社に勤める研究員榊原航平(さかきばらこうへい)と結婚し、実家から離れた研究所にいたが 薬品の爆発で一人息子を残しし二人とも息絶えた。まだ修平が5歳の時だった 晋、実夫妻に引き取られた時、子宝に恵まれなかった夫婦にやっと生まれた一粒種の遥人はその時 まだ3歳だった。二人は兄弟のように育ち 大人になった…2年前遥人が交通事故に巻き込まれ、命を落とすまで すべてが順調な池畑家だった。 池畑家の三女 雅(みやび)は21歳の大学生の時に30代も半ばの水田をどこからか連れてきて、クラブ「みやび」を開いた。水商売に慣れた水田を主体に池畑建設の社交場ともなり、情報収集の場でもあった。そこで雅は次々と男を漁った。上品で魅力的で破廉恥な雅が生まれた。
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