裏アカ

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那知が脅しをかけてくるのかどうか分からなかったし、その休みの日まで黙っているという確証は無く不安でいっぱいになる。 そんな不安が消えないまま、あと数日を過ごすのかと思うと胃のあたりがキリキリするような気がした。 * * * * * * 遂に、那知が家に来る日がやってきた。 会社では特に何も無かったのが逆に怖いような気もした。だが、バレていないという安心の方が勝った。 念の為、SNS投稿も配信も我慢した。あの時みたいに見られたい衝動に駆られたが、また那知に見られでもしたらと思うと我慢する他なかったのだ。 寄せられるコメントは更新を待つ声が多かったが何とか踏みとどまる。写真の投稿、動画配信は我慢した。けれども性欲と言うものは抑える事ができず、何度か自慰をしたし会社には下着として役目を果たさないようないやらしいものをみにつけて出社するなどしてしまった。 「……北原はなにがしたいんだ?」 彼の意図する事が読み取れず対策も練れない。 アレコレ考えているうちにドアチャイムが北原の来訪を知らせた。 「あ、おはよう……いらっしゃい。迷わなかったか?」 「別に。」 「そ、そうか。とりあえずどうぞ。」 那知を招き入れ、ソファへ座るよう促す。 「コーヒーしかないけど、いいか?」 「あー、気にしなくていいっすよ。」 「……そっか。でもせっかくだから、少し待ってて。」 一織は逃げるようにキッチンへと向かった。思っていたよりも自分が緊張していることに気がついたのはコーヒーを淹れる手が微妙に震えていたからだ。 何から話せば良いのかと考えながら時間を稼ぎたくてワザとドリップコーヒーにしたのに、震える手に気が付かされただけだった。
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