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何とかコーヒーを淹れ終え、リビングに戻ると北原はどこから探し出したのか、隠しておいたはずのローターやバイブ、下着を眺めていた。
「ちょっ、北原……」
「これぜーんぶ見吉さんの私物だったんだね。全部見た事ある。」
「全部って……」
「まぁ、俺が見つけた時からだけど。」
「いや、って言うかどこから見つけたの?」
そこがずっと疑問に思っていた所だ。会社の奴にバレる様なことはして無いはずだし、身元を特定されるような所では撮らない。mioでのSNS投稿を始めてから自分を見てくれている人にリアルで会うという事だってしていない。
「テキトーに抜ける動画探してたら出てきたんだよね。最初は見吉サンだって分からなかったけどさ。仕草とか似てるなって思い始めた時にちょうどホクロとか見つけてさぁ。確信なかったけど……」
「……カマかけた?」
「そ。IPアドレスなんて特定できねぇし?回りくどい事するより早いじゃん?で、見吉サンは何でこんな事してんの?趣味?それとも癖?」
「それは……」
この日の為に考えていた言葉が出てこない。
「見吉サン?」
「……俺は昔から姉たちに着せ替え人形にされてて、最初はそれの延長線所の事だったんだ。」
元々華奢な体格で女装をして別人になる事が楽しかった。SNSを始めたのもその時だった。女装男子のmioとして自撮りを載せていたのだ。写真を投稿する度に可愛いとはやし立てられて嬉しかった。そこからもっと見てほしいと思うようになり、頑張って着飾ってSNS投稿を続けていくうちにエスカレートして行った。その頃から自身の性について少し考えるようになったと言う。
別に女性になりたい訳では無く、こうやって見られる事に快感を覚えた。そして、女性にコメントを貰うよりも男性に好奇の視線やいやらしいコメントを貰うことにドキドキしている自分に気がついた。
そこからmioの露出度は高くなり、やがて裏垢男子mioへと変貌を遂げてしまったのだと一織は話した。
「あくまでmioは別人格と言うか……ストレス発散みたいな感じで続けていくうちに止められなくなってしまったんだろうな。」
長々と語る一織を邪魔するでもなく那知は静かにそれを聞いていた。
「だからと言って、こんな事続けるのも良くない事くらい俺だって分かってるんだ。会社だって、それなりの地位だってある。こんな事がバレたら仕事を無くしかねない。」
「そうだね。でも止められないんでしょ?だからこの前だって投稿止めてたのに再開した。」
「……。」
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