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「ちょっと、立花さん!」
雷のような声で呼び止められたのは、ちょうど玄関を出て車に乗り込もうとした瞬間だった。
鬼のような形相で仁王立ちする山口さんの奥さんに、ぎょっとする。
「お、おはようございます。何か……」
「何かじゃありませんよっ!」
爆発音のような怒号に、思わず飛び上がりそうになった。ところが――
「いつもいつも困るんですけど! どうしてちゃんとやってくれないんですか」
彼女が手にしているのが今朝がた出勤する夫に持たせた我が家のゴミ袋だと気づき、ほっと胸を撫で下ろす。なんだ、いつもの苦情だったのか。
「これ! 何がおかしいか自分でわかりますか?」
「はぁ……?」
袋の口は二重に縛ってあるし、側面には極太の油性マジックで立花と名前を書いてある。電池やスプレー缶はもちろん、発泡トレイやペットボトルのような資源ごみも混ざってはいないはずだが……。
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