母親

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母親

 起床時間は毎朝五時半。  洗濯機を回しつつ、併行して朝食とお弁当の準備。  高校二年生の娘と中学二年生の息子、夫を無事送り出した後も、洗濯物を干し、家の中を掃除機掛けして……と一人で運動会の役員のように忙しなく家の中を行ったり来たりする。  そうこうしているうちに時計の針が八時半を回っている事に気づき、慌てて身支度。申し訳程度に顔にファンデーションをたたき、眉毛を引いただけで化粧は完了。家を飛び出し、マイカーである軽自動車に飛び乗る。  アクセルを目いっぱいベタ踏みすれば、約十分でパート先である電子部品の製造工場へ到着……というのが、私の毎朝のルーティン。  だけど、今日はちょっと違う。  今日は息子遥の十四回目の誕生日。朝はみんな何気ない顔をしていつも通り出て行ったけど、夜に誕生日パーティーが待っている事はそれぞれ理解しているはずだった。  本来ならば私も、朝の内から夜に向けて料理の下準備だけでも済ませておきたいところだったけれど……今日だけはそうもいかない事情がある。  早めに家事を切り上げた後は、いつもよりも念入りに化粧を施す。クローゼットをひっくり返し、普段着よりは少し余所行きで、かといって飾り過ぎないちょうどいいラインを探す。  悩んだ末に、首元にフリルの付いた無地のカットソーとタイト目のパンツに決めた。その上にシンプルな綿素材のロングコート。これだとカジュアル過ぎるから、足元だけパンプスにしようか。ポーチもさりげなくお出かけ用のブランド品で。
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