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「ただのパパ友じゃなくてなんなんだよ」
三枝は、数人が樹の肩を抱き寄せたのを見ても、ピンときていないらしい
「こ、恋人…?」
勢いよく宣言したものの、肝心なところは尻すぼみになった
なんで疑問系なんですか?
樹はツッコミたくなった
「え?!マジ?!いつから?」
「2年前くらいからかな…知り合ってからはもっと経つけど…」
「マジか。理科子さん亡くしてから10年だもんな。お前にもそういうことが起きてもおかしくないよな」
三枝の反応に、数人は肩の荷が降りた気がした
「まあ、お前が結婚するくらいだし?」
「それな」
自然に、いつもやりとりしているような軽口が出た
「そういえば、南出さん助けただけじゃなくて、他にもお手柄あったんだってな?」
三枝は二人の関係については掘り下げることなく、話題を変えた
「え?」
「あれ?聞いてない?渋谷署の連中が南出さんの救助に踏み込んだとき、別の部屋では薬物取引の真っ最中だったらしい。末端価格ウン億だって」
数人と樹は目を見合わせた
※※※※※※※※※※※※※※※
二人は三枝の車で送ってもらった
車が止まる音を聞いて、峰希と英と雪が出てきた
「お父さん!」
峰希が裸足で樹に駆け寄った
「峰…」
樹が抱き締めると、峰希は、ずっと塞き止めていたものがあふれ出したかのように泣き出した
もらい泣きしそうになったところで、英と目があった
「父さんは?」
「俺は平気」
「よかった」
あまり物事に動じず、父親からも【鉄面皮】と揶揄される英が、笑顔になった
その顔があまりにかわいくて、数人は英を抱き締めた
英は口では「やめろ!」と言いながらも、数人の抱擁を受け入れた
「樹、三枝、こんなときになんなんだけど、ちょっといいか?」
子供たちと雪を樹の家に戻し、三人は数人の家に移動した
三枝が「早く樹さんを休ませてやれよ」と言ったが、三枝自身が忙しい身だ
いまをおいて、他にないと思った
「乃木にもう一度会いに行ってくるよ。真実を知りたいんだ」
「記事はどうするんだ?」
三枝が聞いた
数人はそれにうなずくと、
「書かない。それは決めてることだ」
小室に会って、その気持ちは強くなった
滝沢の存在、そして、彼女が身ごもっていたという、子供の存在が大きかった
【にじゅうまる】で起きたすべての出来事が鮮明によみがえった
「次は僕も行きます。もう置いてきぼりは嫌ですから」
樹が言った
「危険かもしれないし、また茂手木に会うかも…」
「構いません。僕は数人さんのパートナーですから。あなたが悩んでいるときは、そばにいたいんです」
数人は樹の目を見た
真剣で揺るぎない、真っ直ぐな瞳だった
数人は負けを認めた
「頼むな」
「はい!」
樹が、キュート、とも言える笑顔で答えた
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