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「大きなものはやっぱり売ろうよ。しっかり持っていけば、逃げる準備もしているみたいだ」
「あら?背水の陣?」
君はクスクス笑う。
「君は余程、僕をヘタレに思ってるよね?」
「うふふ。愛すべき存在だとは思ってるよ」
言いよう一つで感じ方は、ガラッと変わる。君は段ボールにガムテープを貼り付けている。
「次は掃除機ね。床も水拭きと空拭きするからね」
またまた君の指示に従い僕は忙しく動く。君はいらないであろう小物をゴミ袋に詰める。君は僕の部屋には週に三日は来るから、僕の必要とするものは八割は理解している。十割理解されることは、この先何年一緒にいてもないだろう。その二割の未知が大切な部分なのは、もちろん僕も理解はしている。パートナーはクローンじゃない。全部同じ必要なんてないんだ。
部屋はあらかた片付き運ぶものと捨てるものの分別は済んだ。あとはリサイクルショップに電話をかけて大きなものの査定だ。
僕が電話をかけている最中、君は薬缶でお湯を沸かす。洗い物が出ないようにお昼はカップ麺。そんな小さな小物も新生活への期待値になる。
電話を終えて君と向き合ってお昼。君は麺をすすりながら、マジマジの僕の顔を見る。
「何?」
「んー。よく覚悟を決めたなって。多分、君がイヤになるようなことも多いと思うよ?口煩くしたり、小言言ったり。私が見るには君はそんなタフじゃないもの」
「そういうのを乗り越えなきゃ、これからなんて考えられないでしょ?」
「ふふ。健闘を祈る!」
全く、君はすぐに僕を弱いもの扱いする。どんなに弱くたって逃げちゃ駄目な場面はあるんだ。それが将来にかかわるものならば尚更だろう。
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