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そこは、奇妙な現象が起きていた。
雨が二つの影を避けて落ちていくのだ。
そんな事は、当然と態度で示すその片割れが唐突に呟いた。
「ラブラブやないのさ〜。その乳揉んだろか」
その片割れは、法衣のような格好にサングラス。見るからに怪しい風体の女だった。
「あゝそれ、いいですね。そのまま捥いじゃいましょうか」
続いてもう一人が相槌を入れる。
こちらは、道着に袴姿の細目の女だった。
「覗き…でしょうか。あまり良い趣味ではありませんね」
「それにしても不愉快です。あの角女、射る事としますね」
「あれは、私のものですから」
「邪恋なよ〜。別に、邪魔とかしないよ。んで、オマエの横槍も株を下げるだけだにゃん」
「アタシは、いつだって晃の味方だからねん」
「まあ、短い人生だ。恋愛ごっこのいくつかはあってもバチは当たらないってゆ〜か」
「…大した余裕ですね」
あの女に天気予報から傘を手渡しにいこうなどという知恵が出てくるとも思わない。
あれは、荒事には聡いが普段はどこか抜けている大雑把な女だ。
大方、誰かがそれとなく入れ知恵をしたのだろう。
「我らの間に、友情などないでしょう」
そう、皆がライバルだった。宿敵と言い換えてもいい。
「誰が、あのお方に相応しいか」
「ものにするのは、この身だと」
「幾千の星を蹴落とし終ぞ消えなかった我らの仲です」
「これから先、如何にするべきか。皆が必死なのです。その点において我らは等しく在ると思っています。…あなた一人を除いてね」
法衣の女は、底意地の悪い笑顔で先を促していた。
嫌な女だ。
「認めましょう。現状においては、化野奈津江こそが最も深く彼に寄り添っていると」
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