知らぬ仏より馴染みの鬼、好きの線引きってなんですか?

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思えば、いつからだろう。 それは、作業の合間に、 移動時間に電車に揺られながら、 この間など、試合中に思いを巡らせていた。 好き、なのだろう。 そう、私は彼女が好きだ。 隣人として、 家族として、 女性として、 尊敬している。 これは、惚れていると解釈しても差し支えないのではないか。 分からない。そもそも、彼女との馴れ初めが曖昧だったのだ。 ある時、ふらっとやって来た。 額に角を生やした見るからに怪しい女だった。 それが、いつのまにか居座り寝食を共にしている。それが鹿島真姫という女だ。 あれから十年の月日が過ぎた。 今もあの頃と変わらずに過ごしている。 何故、こんな事を考えているのか。 十年間、何もなかった関係を今更になって気にしだしたのには訳がある。 一つは、この雨のせいだ。 今朝方、天気予報では曇りのち晴れと聞いていたのだが見事に外れ、土砂降りである。 授業も終わり帰るだけなのだが、予想以上に雨が強い。 このまま、走って帰るか。 雨足が弱まるのを待つべきか。 只今、考え中である。 もっとも考えて答えが出るはずもなく、思考はあらぬ方向へと脱線していくのも仕方がないのだ。 二つ目は、以前言われたのだ。 いつだったかの休日。二人でゲームに熱中する中、いきなり切り出された会話だったのだ。 「んでさあ、いつ告んの」 唐突だった。主語も文脈も行間も無視した不意の一言だった。 あまりの唐突、困惑して聞き返してもよさそうだが、そこは長い付き合いである。 「はあ。真姫の事だよな」 意図は察する事ができた。 「なに言ってんの」 が、真意までは分からなかった。
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