1人が本棚に入れています
本棚に追加
この想いはオマエの想定通りか?
それとも、予想外だったりするのか。
まさか、何も考えてないのだろうか。
私はこれからどうなるのだろう。
漠然とした不安が未来を曇らせる。
なんてことはない、誰かに笑われた気がした。
やっと、当たり前を手にした。
それだけのことじゃないか。
『好きにしなよ』
誰かにそう言われた気がした。
考え事が口に出ていただろうか。
雨音がそんな風に聞こえたのかもしれない。
雨は相変わらずでやむ気配もない。
覚悟を決めて走って帰ろうか。
今は、そんなに体調も悪くない。
少しくらいなら平気だろう。
私が意を決して雨の中に飛び出したその時だった。
「よっ!迎えに来たぞ。濡れ鼠」
雨で不明瞭な視界の中、見知った顔がそこにあった。
傘を持った知人が目の前に立っていたのだ…コイツ、最悪である。
何故、あと五分早く現れなかったのかと思うも八つ当たりだと自覚した。
なんか、急に馬鹿らしくなった。
人生なんてそんなものだろう。
空気を読まない。混沌である。オチも謎。
ハッピーエンドでもなければ、スタッフロールもない。
勿論、トイレ休憩も無しだ。
ポップコーンはあると嬉しい。
そんな私を横目に、赤い鬼は薄く笑うのだった。
私の名は、奈々弥美晃。
胸中に渦巻くこの想い、心地好いと嘯くには経験も足りず足掻く毎日であるが。
「我が胸中に成竹有り」
「ん。何か言った?」
迷わずと嘯くこの生き方を、早々変えられそうにはないのだった。
おしまい
○
それは、赤鬼が意中の彼に相合傘を提案したころ。
後方、少し離れた家屋の屋根に二つの影があった。
最初のコメントを投稿しよう!