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2.どーっちだ?
「おはよう」
「おはよう!」
「……おはよう」
三人は待ち合わせて登下校している。朝の集合場所に先にいたのは、おかみとせおちゃんだった。
おかみは、黒髪のボブカット。前髪を桜のピンで留めている。身長は平均くらいだ。帰宅部室も、彼女がいれば静かになる事はないだろう。
せおちゃんは、三つ編みのおさげをツインテールのように背中に垂らし、眼鏡をかけている。平均身長のお嬢やおかみと比べて数センチ程度高い身長。無口な彼女は、ふざける時以外は滅多に話す事はなく、鈴が鳴るような綺麗で小さな声が特徴的だ。
――それが、今朝はどうだろう。
「何してんのお嬢!早く行こうよ」
「……」
「いや、いやいやいや」
おかみは、鈴の音。
せおちゃんは、わいわい。
まるで、中身が入れ替わってしまったように、二人の話し方がそっくり変化していた。語尾や雰囲気までそっくりで、直ぐには状況が呑み込めない。
せおちゃんが後ろ手にスケッチブックを持ちながらそわそわしているから、それがドッキリなのだと分かった。
お嬢が昨日の部活で「ドッキリされてみたい」と言ったからだろう。
「…………二人ともどうしたの?」
「よくぞ聞いてくれました!」
くるくる回りながら、おかみが嬉しそうに叫んだ。
「実は、ここに来る途中に宇宙生命体に会っちゃってさ。なんとその生命体、足あと型なのです!人間の足あとみたいな形で地べたに張り付いてて、ワレワレは謎の宇宙生命体だーって言って襲ってきたの!」
「自分で謎って言うのかよ」
「そう。それで、その謎の宇宙生命体の学者団が一体、切り込み隊長隊隊長補佐第一軍書記代理の攻撃によって私たちは入れ替わってしまったの」
「くどいわ……というか、入れ替わった?」
ドッキリを仕掛けてくれた事が少し嬉しくて、お嬢はいつもなら受け流す二人のおふざけに久々に乗った。
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