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「そう!足あと型宇宙生命体は地球を侵略して地球資源を持って帰りたいらしくて、人格を入れ替える事で混乱させる作戦なんだって」
「地味だなぁ……」
「入れ替わった証拠にね、お嬢!今日の私のパンツは黒だよ!ほら!」
「きゃあっ!何すんのせおちゃん!?」
「確かに黒だったけど今おかみ二人いるよね」
偽おかみにスカートを捲られた本物のおかみは、ドッキリの設定を忘れて偽おかみに突っかかっていた。
偽おかみに「設定忘れてる」と指摘され、慌てて表情を作っているが、偽おかみの方を振り向いたせいでお嬢の視界にはおかみが後ろ手に持っていたスケッチブックに黒いマジックで書かれた「ドッキリ大成功」の文字がはっきりと見えていた。
大失敗だった。
「……まあ、こんな時もあるですわなのよ」
「語尾ごちゃごちゃだな」
「これも宇宙生命体の攻撃ね」
「どちらかというと地球生命体のせおちゃんの攻撃だと思うけど」
「……おかみ、今よ」
お嬢が慌ててすっかりぼろを出し始めているおかみの相手をしていると、口許をぷるぷると震わせたせおちゃんがおかみの肩をつついていた。せおちゃんに至ってはもはや偽おかみであろうともしていない。
まだ何かあるのかとほんの少し期待したお嬢は、満面の笑みでスケッチブックを掲げるおかみを見て言葉を失った。
「じゃじゃーん!!ドッキリ大成功!」
「大失敗だろうが!」
「……足あと型宇宙生命体の文明の話をもう少ししておくべきだったわね」
「失敗の原因はそこじゃないと思うぞ」
「もう、せおちゃんしっかりしてよね!バレちゃったじゃない!」
「アンタだよ!」
やいのやいのと騒ぎながら、三人は寸劇をやめて歩き出した。
朝から全く、と襟足を掻くお嬢は、言葉とは裏腹に、緩んだ表情を浮かべている。
せおちゃん曰く、「『ドッキリとかされてみたいなぁ……』と、仰せでしたので」との事らしい。
おふざけには積極的なところが、いかにもせおちゃんっぽくて、お嬢は二人にばれないようにはにかんだ。
今日も三人の朝は、つつがなく終わりそうだ。
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