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歩道の少し先のあたりで、小学生二人が騒いでいるのが見えた。
朝の通学路のこの辺ではよく見かける子たちだったから、三人は特に気に留める事なく歩いていく。
会話がはっきり聞こえる距離まで近づくと、小学生二人の他にもう一人ぶんの声が聞こえてきた。しかし、他に人影などない。
「だから何度も言っているだろう。私が謎の宇宙生命体の学者団が一体、切り込み隊長隊隊長補佐第一軍書記代理だ。この星の言語の習得などワレワレ学者団には容易い」
「ねーねーなんで足あとが喋ってるの?」
「私知ってる!盗撮だ!」
「ワレワレはこういう生命体なのだよ。それより、どうして私の入れ替え攻撃が効かないんだ……!?」
「だって面白いし」
「さっき五分で戻るって言ってたし」
「……くっ!やはりワレワレの星は滅びゆく運命にあるのか……!!」
三人ともが、通り過ぎるまで一言も発する事無くその会話に聞き入ってしまっていた。小学生二人の後ろに来た辺りで覗き込んでみると、五十センチメートルほどの大きさの黒い人間の足あとが話している――ように見えた。
小学生二人から少し離れても沈黙が続く妙な空気を破ったのは、せおちゃんの一言だった。
「これがホントの、ドッキリ大成功」
「あっ、じゃじゃーん!!『せおちゃんのパンツは……』あっ、間違えた。『ドッキリ大成功』!」
左右から大成功を告げられた切り込み隊長隊隊長補佐第一軍書記代理のドッキリに、お嬢はこう叫んでいた。
「これは大失敗であれよ……!!」
今日の日捲町の朝も、つつがなく終わりそうだった。
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