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誰にも会いたくない。独りになりたい。
そう思うことが十五歳の俺にはしばしばあった。高校では人当たりの良い生徒なのだがその心は誰にも嫌われたくないだけであり、時折ひどく疲れを感じてしまい一人になりに海へ向かうのだった。
俺は海が好きで、またこの目に最大限魅力的に映す夏も好きだった。俺のよく行く海岸には高い防潮堤がありそこから望む海は太陽の光が反射して文字通りに光り輝く。防潮堤の下は砂利浜になっており降りることも出来るようになっているので、小さい頃両親に連れてきてもらった時は下に降りてよく走り回りはしゃぎ回った。その景色を、空気を鮮明に覚えている。
今は上から水平線を見つめ海の向こうをぼーっと見つめるのくらいである。それだけでも自分の心を休めるのには十分だった。
いつもの海岸に到着し近くの駐輪場に自転車を停め、階段を上がりいつもの気に入っている位置へ向かい俺は肘を掛け向こう側を覗く。
そこにはいつもと変わらぬ景色が広がっていた。
堤防で釣りをしている大人、犬を散歩させている人、夏の空気を楽しみにきた恋人たち、誰かが餌を与えているのかやたらと人懐っこい猫が居る。今は九月で夏休みシーズンは終わり、尚且つこの海は遊泳禁止であるため他の海に比べ人が少ない。それがまた出来るだけ独りになりたい俺には非常にありがたかった。
今日は風も吹いていて自転車での移動でかいた汗にひんやりとした風邪があたり心地良い。晴々とした青空に絵に描いたような雲。最早医学的にもヒーリング効果がありそうだ、いや間違いなくあると俺は感じた。俺は大きく深呼吸をして遠くを眺め、
「明日なんてこなけりゃいいのにな」
俺はわざとらしく誰に伝えたい訳でもないが呟いた。
しかしそのいつもの風景に特別なものがあった。
大きいビニールの袋を手に持ちながらおそらくゴミ拾いをしているショートカットでサンダルを履いた俺と同い年ぐらいの女の子がいたのだ。
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