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 あまりに悲しい響きだけが事務所に籠る。私たちは何も言えず彼女を見つめた。小さな体を震わせながら涙するこの人を励ます言葉なんて、今はこの世のどこにも存在しない。  なんの罪もないのに大切な人を奪われた悲しみは、どう努力しても第三者がすぐに癒せるわけがない。  どんどんこぼれ落ちる涙を眺めながら、私は小さく言った。 「須藤さん。ご存じかもしれませんが、私は霊の姿を見ることができます、時にはその霊の思考を読み取ることも」 「は、はい……」 「お姉さまはお話ができない状態でしたが、それでも弥生さんの気持ちは感じ取れました。  菊池さんへの恨みや怒りより、ただ大事な人の元へ帰りたい……その気持ちが弥生さんの全てでした」  須藤さんの涙が一瞬止まる。真っ赤になった鼻もそのままに、私を見た。  ゆっくり微笑んでみせる。 「あなたですよね、須藤さん。妹であるあなたの元に帰りたいって、ずっとずっと願っていたみたいです」  一度だけ入られたとき、首を切られる瞬間の気持ちがシンクロした。たった一人の大事な人にもう一度だけ会いたい、そんな心で弥生さんはいっぱいだった。
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