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間違いなくその相手は須藤さんだ。一緒に暮らしてきた大事な妹、きっと彼女に会いたくて仕方なかったんだ。
止まった涙は再び溢れ出し、彼女は大きな声を出して泣いた。
私たちはそのまま見守った。
そうか、弥生さんは妹である須藤さんをあんなに大事に思っていたのか。きっと想像以上の絆が二人の間にはある。それを引き裂いたあの男には怒りを通り越えて言葉にできない感情が沸き出るが、もはやぶつけることもできない。
弥生さんは亡くなってしまった。須藤さんにとってはそれが全て。
耐え難い苦しみで私には想像もつかない。病気などとはまた違う、誰かに奪われたという真実。
そのまま誰も言葉を発することなく彼女の泣き声だけが響いてる中、ふと気がつくと九条さんがある一点を見つめていた。事務所の出入り口のようだった。
私は釣られてそちらへ視線を向ける。その瞬間どきりと自分の心臓が鳴った。
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