3

84/91
前へ
/1749ページ
次へ
「そんな、だって九条さんも伊藤さんも私のために色々してくれたじゃないですか……! 須藤さんをストーカーだと思っていた頃、伊藤さんは必死に調べてくれたし九条さんはそばについててくれたし、私本当に嬉しかったです。だからそんなこと言うのやめてください」  私が言うと、ようやく九条さんはこちらを見た。正面で目が合うと途端私の心は大きく波打つ。やけに澄んだ九条さんの瞳はあまりに綺麗だった。  彼は突然私に手を伸ばした。驚きで固まっていると、その大きな手が私の首に触れた。少しひんやりしているはずの九条さんの手なのに、触れられたところが熱を持ったように熱い。 「まだ痕残ってますね」 「へ? あ、ああ、引っ掻き傷ですよね、もう治りますよ!」  ドギマギしながら答える。ロープで締められた痕ではなく、それをなんとかしようと自分の爪でつけてしまった傷だった。ほとんど消えかかっていて、何も言わなければ気づかないようなものだ。  私は緊張してしまったのを必死にごまかすように明るくつとめて言った。 「もううっすらですし、大丈夫ですから! 髪下ろしていればあんまり目立たないし!」
/1749ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4546人が本棚に入れています
本棚に追加