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 いやそんなことより、なんて答えようか一人慌てふためく。何を隠そう今好きな人は目の前にいるあなたです、なんて言えるはずもなく、なんと言って誤魔化すのがいいのか経験値の低い私にはすぐに分からない。  だが私より先に、九条さんが口を開いた。 「ああ、以前付き合っていた人は明るくて人気者のリーダーだと言っていましたね」 「……あ」  言われて思い出す。婚約まで約束したことのある元恋人のことだった。  初めて付き合った人だった。この視える能力のことを話せずにいたが、ある日バレてしまった。それから音信不通になり振られた。その後私の妹と付き合うという笑えない後日談つき。  確かに思い出せば、すごく好きだった彼は九条さんの言う通り明るくてみんなの中心にいた、どちらかといえば伊藤さんタイプだ。あそこまで神がかっていないが。  いつもニコニして、人の輪に入れない私を誘ってくれるような人だった。  ちらりと横を見る。  ……どうして今は、正反対の人を好きになったんだろう。
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