第一章 餓狼と野良犬

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 今いる場所は白龍と白騎士客室に来ていた。白から情報を聞くためだ。  ベットに腰を掛けたエミ。俺と白は別々の椅子に座る。用意されたコーヒーを呑む。 「うんうん、僕もハルカイに困ってたんだ。情報は集めてたんだけど」 「そうか」  聞いた情報によると犠牲者も増えているが人口も増えている何とも不思議な矛盾が起こっている。  その謎を追及した結果、ギルドメンバーの一部がハルカイに殺さたそうだ。人数は少ないが白からだと殺された彼らはかなりの実力者らしい。雑種のドラゴンを単騎で潰せるだとか。   「え?マジか、雑種っても小さい都市を滅ぼせるだろ?倒せる程の奴を倒す程の実力があるのか?」 「うーん、どうやら不意討ちなんだ。僕も公爵から依頼を受けて捕獲しよう罠とか麻痺肉を仕掛けてた時に襲われたらしいんだ、しかも即死だって」 「即死級の不意討ちかぁー、それで攻撃箇所は?」 「喉仏だね、依頼に書いてある通り噛み切ってるんだよね。それと最近分かったんだけど、噛み跡が同じ場所に二つあるんだ。」 「ほほう?」 「さらにその噛み跡をよーく検査するとさ、これを見つけたんだ、一昨日の死体から見つけ出したんだけど、見てみる?」 「お?そうか見せてくれ」  話し合いが進む。エミはエミで話の内容に追い付けずに客室に用意されたベットで寝始めていたのだった。  闇ギルドマスターが都市に入って数十日が経過した真夜中。  街灯は最低限に道を照らしている。  歩く者は居ない。  その代わり、死体が転がり腹を空かせた獣が首元に食らい付いていた。   「ガブ、ブチリ」  クチャクチャ。  パキ、ゴキリ。  普通なら獣は首元を喰らい去るが、獣は骨等気にせずに喰らっていた。  首元の肉ではなく頭部、腹部、腕部、胸部、内臓を無我夢中に喰らう腹を空かせた獣。 「ガ、ァアァ、アアアァ」  獣の様な声を発する、餓狼ハルカイ。 「獣だな、ハルカイ?」 「ガゥゥウウゥゥゥルルルゥ!!」  突如として現れた黒一色のシルクハットを被り杖を付いた紳士服を着た男が道路の中央に立っていた。  異様な気配、先程までに無かった気配に警戒しながら四つん這いで男から距離を置こうとする。 「そう怯えなくてもいいじゃないか」 「ガゥゥゥ?!」  だが男は無警戒に近付く。その無警戒さにハルカイは一歩後ずさる。  ハルカイが感じたものは  困惑  異様  未知  気色悪さが身体中に襲う。  意味不明な存在感を放つ男はハルカイにゆっくりと一歩ずつ近付く。動く素振りをせずただ金縛りの様に固まったハルカイ。 (獣人かと思ったが、違ったな)  距離は、ハルカイと男が後ニ歩動けば間近に成るほどの近さ。 (だがまぁ、魔獣の様な魔力をしている)  男は腰を曲げ片手を伸ばす。 「言葉が分かれば良いんだが、真夜中にこんばんは、餓狼のハルカイ。君を勧誘しに来た」  シルクハットの奥から赤い残光が走る。  赤い残光と共にハルカイは動き出した。両手の爪先が赤く鋭く長くなり男に向けて飛びかかる。  首元を狙った攻撃を避けた男は杖で軽く突く。軽く、だが衝撃は強く屋根の上に吹き飛ばされる。 「爪が伸びた・・・・ああ成る程だから魔力が宿るはずが無い獣人が伸びるはずだ。」  吹き飛んだ方向を向く男の背後に死体が起き上がり噛みつこうとした。  だが、男は振り変えると同時に手の甲で頭部だけ吹き飛ばし死体の頭部から下は痙攣の様に動きながらも男を掴もうとする。  死体は男の肩が当たるか当たるか当たらないかの所で男は片手を死体に胸の前に置く。  その拳を胸に当てたその時、死体は炸裂した。 「へぇ、アンデットクリエイトか。」  その言葉が引き金に成ったのか倒れていた死体いや、アンデット達が起き上がる。  過去に殺された者達も含めて立ち上がった。 「ここも『狂犬病』に侵されてたか~」
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