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其れは、ひとつの約束が切っ掛け。
東の御所へ、今年も春がやって来ようとしていた。庭にて、膨らんだ桜の蕾を指差し、帝御寵愛の后妃が無邪気な笑顔を見せる。
「――一刀、桜が咲き始めてるよ。楽しみだね!」
近付く春の気配への嬉しさに、錦は一刀を振り返える。少し後ろを歩いていた一刀も、そんな笑顔を目にし表情を和ませて。
「暖かくなってきたからな……もうじきだろう」
桜へ顔を向け、そう答える優しい声。錦も同じ木の下に並ぶと。
「東の御所でお花見ってあるのかな。何をするの?」
笑顔で、いとおしき方が育った国で培われてきた文化の在り方を問う。一刀は、桜よりそんな錦へ顔を向け微笑んだ。
「桜が咲く頃に此処東では、毎年治安維持部隊を筆頭に演武の宴を行うのだが……其れに花見も予てと言う具合だ」
成る程。東の演武とは、聞くだけで其の重みが違う。
「そうなんだ……凄いなぁ。西では、歌会と舞を披露する機会があるけど……演武は、そう大きな規模ではないな……」
文化の違いを改めて噛み締め、感銘を受ける錦へ一刀は話を続けた。
「東は、古より武を重んじてきたのでな。其の成果や精神、日々の努力を天へ向け披露すると言う意味があるのだ……技量により、審査を通過した一民の演武参加も可能だ」
錦は、其の規模に驚きつつも目を輝かせる。是非、其れを目にして観たいと。
「じゃあ、一刀も何かするの?」
期待を込めた眼差しに、一刀は苦笑い。
「一応な。俺は今年、騎射術を披露する事になっておるが」
「一刀って、馬に乗っても矢を射れるのっ?」
驚き、期待、尊敬、錦の眼差しは更に期待と共に輝きを増した。流石に一刀はたじろぐも。
「そう驚く事か。戦等では、あらゆる状況に対応出来る技術が必要だろう。得手不得手はあるが、取り敢えず問題無い程度には仕上げている」
「凄いなぁ。一刀は、何でも出きるんだね……!」
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