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まどかは慌てて頷くように顔を伏せた。
もちろん、赤くなった顔を隠すためだ。
なんとか冷静を振る舞い、「どういたしまして」と、こわばった顔で笑顔を作った。
その翌日、まどかが教室で雑誌を読んでいると、「パコン」と頭をノートで叩かれた。
「いたっ」
頭を片手で押さえたまま、まどかは机の前に立つ有吉をにらんだ。
「おう」
「ちょっ……、それが物を借りた人の態度かなあっ」
目があうと、なぜか有吉はふいっと目を逸らした。
「うるせーよ」
なんだか態度が普段と違う。
ソワソワしているというか、まず目を合わせないのが変だ。
「ノート、サンキュ」
視線はやっぱりまどかの頭の上を辺りを泳いでいた。
ーーあ、山口を探しているのかも。
「山口なら資料室にプリント取りに行ったよ」
「あ、うん……」
そのとき初めて有吉の視線がまどかと交わった。
そのまま数秒感、まどかも何故か目をそらせずにいた。
「おいおい、なんでお前ら見つめ合ってるの?」
突然、山口が有吉の肩口からひょいと顔を出し、有吉は漫画のように大げさに一歩後退った。
「ばっ、ばか!見つめてっ……」
「なっ!ないし!」
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