ELYSIUM

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 二人の声が重なる。 「オ、オレはこいつにノートを返しに来ただけだし」 「ああ、そう。へーえ」  まどかと有吉に山口は疑わしげな目を向けた。  まどかは頰が熱くなるのを感じながら、負けじと山口を見上げると、そのタイミングでチャイムが鳴った。 「あ、オレ、もう行くわ……ノート、サンキュ」  有吉は一瞬普段の有吉に戻り、素早く退散していく。  その後ろ姿を見送りながら、山口は「変なやつ」と呟き、再びまどかを見た。 「おまえもな」 「何よ」  そのとき教員が入って来ると、山口もまだ何か言いたそうな素振りを見せつつ、席に戻っていった。 ーーいや、変なのは絶対に有吉の方。  まどかは胸の内で返した。  その夜、まどかは部屋で生物のノートをぱらぱらと繰っていた。  まさか、このノートが原因ではないと思うが、まどかには、有吉が挙動不審になるような原因はこれの他に思い当たらない。  その時ふと、余白の走り書きに目が止まると、まどかの体は凍り付いた。 「あ……」  すっかり忘れていた。    そこには、大きくはないけどはっきりと『K.A好きだぁーー』と書かれている。
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