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書いたのはかなり前だ。すっかり忘れていた。
退屈な授業中、有吉のことを考えていて、想いが溢れてつい、さらっとシャーペンが動いてしまった。
「やばいよ……これ……」
思わず声に出ていた。
恥ずかしくて、顔が燃えている。
ーー有吉は、多分、いや、絶対にこれを見た。だから、キョドッてたんだ。
もしかして、私が彼のこと好きだって、バレたのかな……。
まどかは「やばい、やばい、やばい………」と繰り返し、ノートにグリグリと額を押し付けた。
だが、次の瞬間パッと顔を上げる。
「いや、ちょっと待って?」
イニシャルでK.Aなんて他のクラスにもいるし、これを見ただけですぐに有吉自身と結びつけるほど、彼も自惚れてはいないだろう。
ーーそうだ。もし、万が一、改めてツッコまれたら適当なアイドルとか漫画のキャラの名前でも言って誤摩化そう。うん。二次元で行こう。
そう自分で自分を宥め、まどかはそれを綺麗に消してから、ベッドに入った。
その後、特にまどかが心配したようなことは何も起こらなかった。
そして、そのショックを境にまどかの恋心も、風船が徐々にしぼんで行く様に、次第に小さくなっていった。
季節が秋から冬へと変化するように。
ゆっくりと、でも確実に。
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