35人が本棚に入れています
本棚に追加
家で私服に着替え、まどかは早速CDを聴こうとケースを開けた。
すると、タイトルカードの裏側に短いメッセージを見つけた。
”金目へ 12月25日 五時にさざんか公園で”
どくん、と心臓が高鳴り、全身に鳥肌が立った。
ーーどうしよう。これって。
明日は――クリスマス。
この日に男が女に特別に話があると言うメッセージは、何を意味するのか十七年生きていたらたいてい想像はつく。
よりによって、有吉からの一番望まないメッセージ。
ーーどうして、突然。
今日まで、自分に対する有吉の態度は、仲の良い同級生の、部活仲間のそれだった。
それが、どうして……。
まどかはハッと息をのんだ。
やっぱり、あの走り書きだ。
きっとあの時、彼はきちんと理解していた。
まどかのそれまでの彼への態度が、仕草が、きっとあの走り書きの意味を色濃くしたに違いない。
思えば、みちるにも勘付かれたほどだ。
ダダ漏れだったのかもしれない。
そう、後悔しても、自分を責めても遅い。
彼はもちろん、まどかを意識した。意識は恋へ変化する。
しかし、まどかの方はすでに彼に対する気持ちを、美しい思い出としてラッピングして、心の特別な場所に仕舞ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!