ELYSIUM

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 家で私服に着替え、まどかは早速CDを聴こうとケースを開けた。    すると、タイトルカードの裏側に短いメッセージを見つけた。  ”金目へ  12月25日 五時にさざんか公園で”  どくん、と心臓が高鳴り、全身に鳥肌が立った。  ーーどうしよう。これって。  明日は――クリスマス。  この日に男が女に特別に話があると言うメッセージは、何を意味するのか十七年生きていたらたいてい想像はつく。  よりによって、有吉からの一番望まないメッセージ。 ーーどうして、突然。  今日まで、自分に対する有吉の態度は、仲の良い同級生の、部活仲間のそれだった。 それが、どうして……。  まどかはハッと息をのんだ。  やっぱり、あの走り書きだ。  きっとあの時、彼はきちんと理解していた。  まどかのそれまでの彼への態度が、仕草が、きっとあの走り書きの意味を色濃くしたに違いない。 思えば、みちるにも勘付かれたほどだ。 ダダ漏れだったのかもしれない。 そう、後悔しても、自分を責めても遅い。  彼はもちろん、まどかを意識した。意識は恋へ変化する。   しかし、まどかの方はすでに彼に対する気持ちを、美しい思い出としてラッピングして、心の特別な場所に仕舞ってしまった。
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