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「とにかくね、私も久々に帰った地元で懐かしい顔を見て、つい、仕事の後にご飯でもどう? って誘っちゃったの」
「そうそう、誘われた」
嬉しそうにニヤニヤ笑う山口にみちるは「きっ」と眉を上げた。
「でも最終的にさんざん口説いたのはどちら様でしたっけ!」
「口説いてねーよ!」
「じゃ、今すぐ別れる!」
みちるが人差し指を突きつけると、「ごめん!」と彼はにべもなくみちるに縋り付いた。
まどかはそのコントのような光景に思わず吹き出した。
「まぁまぁ、それよりもこれ、覚えてる?」
穏やかにごたごたを治めるのが、昔から吉野の役目だった。
彼はTシャツから首にかかっていた銀の鎖を引っ張り、そのヘッドを皆に見せた。
月明かりに光るのはアーミーペンダントだ。
高校の部活でバンドを結成したときに、みんなで注文したものだ。
銀板には、それぞれの名前と、担当の楽器が彫られていて、アクセントに小さな球状のクリスタルが埋め込まれている。
みちるがギター、山口覺がバシスト、吉野がボーカルで有吉和宏がドラム、そしてまどかはキーボードだった。
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