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「みちるには感謝してる。でも……、告ってダメだったら、その後、部活とかすごく気まずくなるでしょ……みんなも。それだったら今のままで十分だし。楽しいし」
親友の、自分を思う気持ちは十分に伝わったが、それでもまどかの言葉にも嘘はなかった。
卒業まで、お互い気楽な同級生の関係を続けられれば十分で、それ以上を求めるのは贅沢だ。
それに、まどかは、何よりも五人でいるのが好きだった。
「もう、あとで後悔しても知らないよ!」
突き放すような口調だったが、その時みちるは励ますようにポンポンとまどかの頭を軽く叩いた。
それからは、まどかに気を使ってか、みちるのお節介もぐっと少なくなった。
そんなまどかと有吉の間に夏休み明け、小さな事件があった。
「金目」
部活が終り、まどかが楽器を片付けていると、有吉が突然話しかけてきた。
「悪いけど生物のノート貸してくれない? オレ、夏休み前、風邪で学校休んでるからさ。結構抜けてるんだよ。おまえ生物得意なんだろ?」
「え……いいけど……」
まどかは傍のカバンからノートを出した。
「助かる! 今日コピーしたら明日返すわ」
有吉はにっこり微笑み、それを受け取った。
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